Q.父は外国籍ですが、日本において長い間事業を営んできました。近年は事業も順調とはいえず、父は多額の負債を残して死去しました。相続人は、同じく外国籍である母と、日本で生まれた私たち子供(外国籍)です。日本法によって定められている限定承認(民法第922条や)相続放棄(同法第938条)のような手続を、日本の裁判所で行うことは可能ですか?

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A.日本の家庭裁判所において手続を行うことが認められる場合があります。

日本では、家庭裁判所が限定承認や相続放棄の申述を受理します。したがって、この問題は「国際裁判管轄」の問題として論じられています。これについての普遍的な条理や条約は存在しないものの、被相続人の最後の住所、相続人の住所、遺産又は相続債務が日本にある場合には、国際裁判管轄が認められるということになります。
続いて、準拠法については、「法の適用に関する通則法」第36条によって被相続人の本国法とされています。相続人が限定承認や相続放棄をすることができるか、どのような場合に承認があったとして取り扱われるか等、相続準拠法に従います。

ご質問のケースについては、被相続人の本国法によって限定承認や相続放棄が認められている場合には、日本の家庭裁判所に管轄が認められるということになります。
ある審判(東京家審昭和52.7.19)では、韓国において死去した韓国人の相続につき日本に住む韓国人の相続人が行った限定承認の申述について、遺産の所在地である日本の家庭裁判所の管轄を認め、被相続人の本国法である韓国法を適用して、それを受理しています。