A.遺言の方式としては、遺言者の本国法か日本法に規定される方式に沿えば有効になります。しかし、遺言能力、意思表示の瑕疵、遺言できる事項等については本国法に従います。したがって、遺言時における本国法に準拠している必要があるという結論になります。
1.遺言の方式
遺言の方式につき「遺言の方式の準拠法に関する法律」(以下「遺言準拠法」といいます)が存在し、遺言を可能な限り有効にしようとされています。遺言準拠法第2条によって、遺言の方式が、次の法のどれかに適合する場合は、方式について有効とされます。
・行為地法
・遺言者が遺言の成立か死去の当時国籍を有していた国の法
・遺言者が遺言の成立か死去の当時住所を有していた地の法
・遺言者が遺言の成立か死去の当時常居所を有していた地の法
・不動産に関する遺言につき、その不動産の所在地法
ご質問のケースについては、日本で長い間生活してきたとのことですので、遺言準拠法第2条にいう住所・常居所は日本に存在します。したがって、本国法か日本法に定められている方式に沿えば、遺言は有効になります。
2.遺言の実質的内容
遺言の実質的内容の問題(遺言能力、意思表示の瑕疵等)に関しては、「法の適用に関する通則法」第36条が適用される(被相続人の本国法に従う)ことになっています。
したがって、遺言の内容については、本国法に反するものであれば実現できません。