相続する人が未成年の場合には、未成年者控除が適用されます。このほかにも、財産を取得した人の状況により、相続税の税額控除が適用されて一定の税額が軽減される場合があります。
1.相続税の税額控除とは
一口に相続によって財産を取得した人といっても、例えば、未成年者や、外国にある財産を取得してその国の相続税に該当する税が課されている人等、さまざまな状況が考えられます。その状況によって一定の税額が軽減されるのが、相続税の税額控除といわれる制度です。具体的には、贈与税額控除、配偶者に対する相続税額の軽減、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除、外国税額控除があります。これらのうち、配偶者に対する相続税額の軽減については、ここでは割愛します。
2.相続開始前3年以内の贈与財産にかかる贈与税
相続又は遺贈により財産を取得した人が、被相続人からその亡くなる前3年以内に贈与を受けた財産があるときは、贈与を受けた財産の贈与時の価額を、贈与を受けた人の相続税の課税価格に加算し、相続税の課税対象となります(生前贈与加算)。この場合、その加算された贈与財産の価額に対応する贈与税の額については、その贈与税の額を相続税の額から控除することができます。相続税と贈与税の二重課税の問題が発生するからです。
3.相続人の中に未成年者がいると相続税が安くなる
相続人の中に未成年者がいる場合は、未成年者控除によって相続税の額から一定の金額が控除されます。未成年者控除の適用を受けられるのは、次の全てに該当する人です。
(1)日本国内に住所があること。(日本国内に住所がなくても、「相続人が日本国籍をもっており、かつ相続人・被相続人が、相続開始前5年以内に日本国内に住所を有したことがある場合」には適用を受けられます。)
(2)法定相続人であること。
(3)20歳未満であること。
控除額=(20歳-相続開始時の年齢)×6万円
なお、上記算式により計算した年齢が1年未満である場合又は1年未満の端数については、1年とし
て計算します。例えば、16歳5ヶ月の人なら20歳になるまでに3年7ヶ月あります。7ヶ月を1年
に切り上げて計算して、控除額は24万円(4×6万円)となります。
4.障害者控除とは
相続人の中に障害者がいる場合は、障害者控除によって相続税の額から一定の金額が控除されます。障害者控除の適用を受けられるのは、次の全てに該当する人です。
(1)日本国内に住所があること。
(2)法定相続人があること。
(3)一般障害者(身体障害者手帳の障害の程度が3級~6級の者・精神保健指定等の判定により知的障
害者と判定された者等)又は特別障害者(身体障害者手帳の障害の程度が1級又は2級の者・精神障
害者保健福祉手帳に障害等級が1級であると記載されている者等)であること。
一般障害者:控除額=(85歳-相続開始時の年齢)×6万円
特別障害者:控除額=(85歳-相続開始時の年齢)×12万円
なお、上記算式により計算した年齢が1年未満である場合又は1年未満の端数については、1年とし
て計算します。
5.短期間に相続が発生した場合
10年以内に2回以上の相続が続いて発生した場合は、税負担の調整を図るため「相次相続控除」と
いう特例があります。この特例は、このような相続があった場合には、前の相続において課税された
相続税額のうち、1年につき10%の割合で逓減した後の金額を、後の相続に係る相続税額から控除し
ようとするものです。年数が経過するにつれて、控除税額は少なくなります。相次相続控除の適用を
受けられるのは、次の全てに該当する人です。
(1)被相続人の相続人であること。
(2)その相続の開始前10年以内に開始した相続により、その相続の被相続人が財産を取得していること。
(3)その相続の開始前10年以内に開始した相続により取得した財産について、被相続人に対し相続税が課税されていること。
なお、この制度の適用対象者は相続人に限定されていますので、相続を放棄した者については適用がありません。
6.外国にある財産を取得した場合の税額控除
外国にある財産を取得し、その財産についてその所在地国の相続税に相当する税が課されている場
合は、日本と外国とで二重課税となるため、日本の相続税額からその相続税に相当する税額が控除さ
れることになります。この外国税額控除の適用を受けられるのは、次の全てに該当する人です。
(1)相続又は遺贈により財産を取得したこと。
(2)(1)により取得した財産は外国(法施行地外)にあること。
(3)(1)により取得した財産について、その外国における相続税に相当する税が課税されていること。