私は医者で、新規開業を考えています。開業資金1億2,000万円は、父からの借入(金銭消費貸借契約)により調達することにしています。父からの借入金に係る借入条件については、貸付金利は無利息で、返済方法は月額50万円返済(期間240ヶ月)です。このような借入を行った場合の税務上の取り扱いは、どうなりますか?なお、事業計画上は、毎月50万円の返済は可能と考えています。

1.元金の取り扱い
契約の前提となる返済期日・返済金額・返済能力等に問題はないと考えられます。したがって、これらの諸条件を明示した金銭消費貸借契約を作成し、その通りに契約条件が履行されている限り、貸付金元本債権相当額の贈与はないと思われます。
ちなみに、金銭消費貸借契約が成立している場合でも、その契約における具体的な返済に関する定め等がなく、借入金の返済能力がその借入者の所得等の状況からみて不合理なときや、「あるとき払いの催促なし」という状況にあるときには、実質的には貸付をした人からその借入をした人に対する贈与があったものとして、贈与税が課されます。

2.無利息である金利の取り扱い
新規開業時の医院用不動産の取得資金としての借入であり、その借入金額も1億2,000万円と多額で、かつ借入期間も240ヶ月と相当長期間にわたることから、無利息貸付に係る経済的な利益に対する課税を行わないと、課税の公平性が保たれないと考えられます。したがって、父から子への利息相当額の贈与があったものと考えられます。

3.留意点
親子間の金銭消費貸借契約に際して、次のような点に留意する必要があります。
・その契約において、返済期日・月々の返済金額・利息に関する約定等を具体的に明示すること。
・約定による月々の返済金額が、その人の所得や生活状況等を考慮して返済可能な範囲内にあると認められる金額であること。
・月々の返済等、契約条件を履行していることを、銀行振込み等によって具体的に証明できること。

2.利息相当額の経済的な利益に対する課税関係
(1)贈与税が課税される場合
対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合において、その利益を受けたときに、その利益を受けた者が、その利益の価額に相当する金額を、その利益を受けさせた者から贈与により取得したものとみなして贈与税を課税する旨が定められています(相続税法第9条)。この規定で「利益を受けた」とは、おおむね利益を受けた者の財産の増加又は債務の減少があった場合等をいい、労務の提供等を受けたような場合はこれに含まないものとされています(相続税法基本通達9-1)。

(2)贈与税が課税されない場合
その利益を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与により取得したものとみなされた利息金額のうち、その債務を弁済することが困難である部分の金額については課税されないことになっています(相続税法第9条)。
また、貸付金額の多少・貸付期間の長短等から総合的に判断して借主の受ける利息相当額が少額であると認められる場合や、贈与税の課税を行わないとしても課税の公平が維持できると認められるとき等課税上弊害がないと認められる場合は、贈与税が課税されないものとされています(相続税法基本通達9-10)。