非適格となる現物分配について説明してください。

居住者の相続

適格現物分配としてみなされるためには、完全支配関係がある現物分配法人と被現物分配法人が共に一定の内国法人のみであることが必要です。複数の被現物分配法人に対して現物分配を行う場合には、被現物分配法人の中に一者でも個人・外国法人・公共法人・公益法人等又は人格のない社団等が含まれてしまっていると、現物分配全体が非適格となってしまいます。

平成22年度の税制改正の前は、法人が現物配当、つまり、利益又は剰余金の配当として金銭以外の資産を株主に移すことを行った場合、「無償による資産の譲渡」に該当し、当該資産の譲渡損益の額は、益金又は損金の額に算入することとされていました(法人税法第22条第2項)。
平成22年度の税制改正では、適格現物分配は組織再編成の一形態と位置付けられることになりました。適格現物分配に該当するならば、内国法人が被現物分配法人に移した資産の譲渡損益については、実現していないものとして、当該資産の適格現物分配直前の帳簿価額に基づき、所得の計算をすることとなりました。
上記の現物分配とは、法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く)が、その株主などに対して当該法人の剰余金配当等の一定事由によって金銭以外の資産を交付することをいいます(法人税法第2条第12号の6)。そして適格現物分配とは、内国法人を現物分配法人とする現物分配の中で、その現物分配によって資産の移転を受ける者が、その現物分配の直前にその内国法人との間に完全支配関係がある内国法人(普通法人又は共同組合等に限る)だけであるもののことをいいます(法人税法第2条第12号の15)。
このため、適格現物分配とみなされるためには、完全支配関係がある現物分配法人と被現物分配法人が共に一定の内国法人だけであることが必要になります。一つの行為により複数の被現物分配法人に対して現物分配を行う場合には、被現物分配法人の中に一者でも個人・外国法人・公共法人・公益法人等又は人格のない社団等が含まれおりますとお、現物分配全体が非適格となります。
適格現物分配により課税の繰り延べられた資産が、国外や公益法人等・人格のない社団等の制限納税義務者に移転すると課税の機会を失ってしまうため、このように考えるようになりました。